ガラスは割れると凶器に

近年、ガラスはその透明性と解放感が現代人の感覚とマッチし、建物により大きなものを取り入れる傾向が強くなってきています。
また、窓だけにとどまらず、天井や床にまでガラスを使うケースも増え、どんどん生活の中に溶け込んできています。
こうした一方、「ガラスは割れ、破片は鋭利な凶器になりうる」ということもしっかりと認識されています。にもかかわらず、何の対策もとられないまま使用されているケースがあまりにも多く、身近なところに危険が放置されているというのが現状です。

事故が起きてからでは遅い

高齢化社会になり、安全性についてますます真剣に取り組まなければならない時代になってきました。
ガラス破損事故の記事やアンケートからも高齢者が事故に遭うケースが極めて多いことが伺えます。
「ぶつかっても突き抜けない合わせガラスにしておけばよかった」「割れても破片が飛び散らない柔軟な強化ガラスにしておけば、こんな惨事にはならなかった」と思われる例は枚挙にいとまがありません。
事故が起こってからでは遅いのです。「安全対策後進国」と世界中から後ろ指をさされることのないよう早急の対応が必要です。

生活安全(日常におけるガラス事故)

一般住宅および学校におけるガラスの傷害事故実態調査をみると、発生原因の多くが、「よろけて」、「転倒して」、「すべって」、「つまずいて」、「ふざけていて」などで、ケガの程度も自宅治療や通院1~6回というのが大半で、通院7日以上という重大なケースはそれほど多くはありません。
ガラスにおける事故は、事故を起こしてしまった人の「不注意」より、安全設計を怠った「施主・設計者・施工者」の責任が問われます。
「ガラスを用いた開口部の安全指針」は国土交通省の指導のもと、不特定多数の人々が利用する公共性の高い建築物の出入口などのガラス開口部について、人体衝突による重大な傷害事故を防止するために策定されました。この「指針」は建築基準法などの法令ではありませんが、国土交通省はこの「指針」の利用・普及を推進しています。万が一事故が発生してしまったとき、この指針が示す安全設計への配慮の有無は、「建築物の欠陥の有無」、「事故を防止する注意義務の有無」の指標となります。

安全対策のため、「どんな建物の」「どんな場所に」安全ガラスを使うべきかを具体的に示しています。
次に示す箇所には、割れたときに破片が飛び散らない「合わせガラス」か破片が粒状になる「強化ガラス」のいずれかの安全ガラスをお使いください。

安全設計が必要とされる開口部は、下記の2つで判断します。

安全設計が必要とされる建築物

  1. 傷害発生の頻度、傷害の程度、建築物の公共性等から考えて緊急を要する度合いが高く、安全設計が求められるもの
    • ショッピングセンター・スーパーマーケット・百貨店・パチンコホール・ゲームセンター・競馬場・コンサートホール・市民会館・劇場・公民館・演芸場・映画館・展示場などのロビーや休憩所、出入口、通路、階段まわり、外部に面する窓など。
    • 幼稚園・保育園・小学校・中学校・高等学校・スポーツ施設などの出入口、通路、階段まわり、ホール、体育館、外部に面する窓など。
    • 浴室・シャワー室
  2. 緊急を要する度合いが1.に次ぎ、安全設計が望まれるもの
    • 事務所・店舗・コンビニエンスストアなどの玄関まわり、出入口、通路、階段まわり、外部に面する窓など。
    • マンション・ホテル・病院・老人福祉施設・診療所・旅館・共同住宅・養老院などの玄関まわり、出入口、ロビー、通路、階段まわり、その他共同部分及び居室など。
    • 一般住宅の玄関まわり、居室など。

安全設計が必要とされる建築物の部位

出入口およびその周辺

ドア等
ドア等に使用されているガラスで床面から60cm未満の高さに下辺がある場合。
ドアの隣接
ドア等に隣接して、120cm未満かつ床面から60cm未満の各範囲に一部叉は全部にガラスが含まれる場合。

外部に面する窓

一般のビル
床面から45cm未満に窓ガラスがかかる場合。
学校
床面から60cm未満の位置にガラスの一部がかかる場合。

その他開口部

床面から45cm未満の高さに下辺があるガラス。(通路、階段まわり、ロビー)。

住宅

玄関、部屋、テラスの出入口ドアのガラス
床面から60cm未満の高さにガラスの下辺がある場合。
玄関、部屋、テラスの出入口ドアの隣にあるガラス
ドアに隣接して、30cm未満かつ床面から60cm未満の高さの各範囲に一部又は全部にガラスが含まれる場合。
その他の窓
床面から30cm未満の高さにガラスの下辺がある場合。
浴室
床面から60cm未満の高さにガラスの下辺がある場合。

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