共同住宅に係る防犯上の留意事項

国土交通省と警察庁は、共同住宅における犯罪増加を受けて「共同住宅に係る防犯上の留意事項」を定めました(平成13年3月23日付)。
本留意事項は、防犯に配慮した共同住宅の新築、改修の企画・計画を行う上で必要となる事項がまとめられており、防犯対策を「基本事項」と「推奨事項」という二段階で位置付けています。
ガラスについては、「推奨事項」の中でも「特に配慮すべき事項」として、「接地階等の比較的に侵入が容易な位置にある住戸の窓においては、合わせガラス等破壊が困難なガラスの使用を推進する」としています。

共同住宅に係る防犯上の留意事項

防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針 

国土交通省は「共同住宅に係る防犯上の留意事項」の円滑な運用を図るために、「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」を策定しました(平成13年3月23日付)。
ガラスについては、住戸のバルコニーなどに面する窓について「破壊が困難なものとすることが望ましい」として「合わせガラス」等を推奨しています。この指針は共同住宅の新築住宅・既存住宅別に設計・改修を行う際の具体的な手法を示した防犯対策のガイドラインとされています。

防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針

ガラスの防犯性能に関する板硝子協会基準

1)本基準の目的
本基準は、ガラスの防犯性能のあり方を明示し、一般生活者の防犯意識を高め、犯罪の防止に貢献することにある。
2)本基準が対象としている侵入手口
本基準は、現在公開されているガラス破りの侵入手口のなかで、最も割合の多い2つの手口(打ち破り、こじ破り)を対象としている。侵入手口の変化に応じて本基準は改定されるものである。
3)「防犯ガラスの定義」
本基準において、4)、5)、に示す性能ランクの、P2A以上かつP2K以上の基準を満たすものを、2)の対象手口に対して防犯性能が期待できるガラス、すなわち「防犯ガラス」と呼称し、これに対し平成15年春より防犯ガラスマークが表示されています。
4)防犯性能を示す性能基準(「打ち破り」手口に関連付けられる防犯性能)

本試験方法は、ISO 16936-1の一部に準じて、2007年7月に制定されたJIS R 3108「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」により評価する。
特に、破損音をあまり気にせずにガラスを破壊し、住民や警備員などが駆けつける前に数分で目的を達成しようとする、いわゆる「打ち破り」手口に関連付けられる。

  • ◇試験方法概略 鋼球落下試験(詳細はJIS R 3108「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」による)

    • A:使用鋼球 直径100mm、重さ 約4.11kg

    • B:落下方法 中心付近の一辺130mmの正三角形の各頂点に順に鋼球を落下させる。

    • C:供試体の大きさ 900×1,100mm

    • D:落下高さと落下回数

      分類 鋼球落下高さ(mm) 加撃回数
      P1A 1,500 正三角形各頂点に1回ずつ計3回
      P2A 3,000 正三角形各頂点に1回ずつ計3回
      P3A 6,000 正三角形各頂点に1回ずつ計3回
      P4A 9,000 正三角形各頂点に1回ずつ計3回
      P5A 9,000 (正三角形各頂点に1回ずつ計3回)×3回
    • E:上記高さ・回数で実施し、3供試体全てにおいて鋼球がつき抜けなかったとき、その分類に合格したとみなされる。

  • ◇「打ち破り」を対象にした防犯性能が認められるガラスの仕様基準

    板ガラスメーカー各社の実験結果、及び中間膜メーカーにヒアリングした結果から、「D」の性能基準に対して推奨されるガラス仕様を以下にまとめる。
    なお、これらは仕様の一例であって、固定されたものではない。
    また実験値として示されたもので各ガラス仕様の性能を保証するものではない。
    個々のガラスのランク付けは試験結果(性能基準)によって行われる。

    分類  
    P1A 合わせガラス  
    P2A FL3+中間膜30ミル+FL3 合わせガラス
    FL3+中間膜30ミル+PW FL5+中間膜30ミル+FL5
    P3A 合わせガラス  
    FL3+中間膜60ミル+FL3  
    P4A 合わせガラス 合わせガラス
    FL3+中間膜60ミル+PW FL5+中間膜60ミル+FL5
    P5A FL3+中間膜90ミル+FL3 合わせガラス
    FL3+中間膜90ミル+PW FL5+中間膜90ミル+FL5
    1ミル=1/1,000インチ(0.025mm) 30ミル=約0.76mm
5)防犯性能が認められるガラスの仕様基準(「こじ破り」手口に関連付けられる防犯性能)

「こじ破り」は、ドライバーなどで音を出さないようにガラスを破壊し、まわりに気づかれないよう密かに侵入しようとする侵入手口であり、日本独特の侵入方法である。

  • ◇「こじ破り」を対象にした防犯性能が認められるガラスの仕様基準
    本基準は、平成13年11月に実施された財団法人 都市防犯研究センターによる実験結果に基づいている。
    以下に仕様基準の一例をまとめるが、これらは実験値として示したもので各ガラス仕様の性能を保証するものではない。

    分類 単板ガラス 複層ガラス
    P1K 合わせガラス
    (FL3+中間膜15ミル+FL3)
    耐熱強化ガラス 6.5mm
    普通のフロートガラスによる複層ガラス
    (FL3+空気層+FL3)
    アタッチメント付き複層ガラス
    (FL3+空気層+FL3)
    P2K 合わせガラス
    (中間膜30ミル)
     
    P3K 合わせガラス
    (FL3+中間膜60ミル+FL3)
    合わせ複層ガラス
    単板ガラス(この場合、単板ガラス=3mm以上とする)+
    空気層+合わせガラス(中間膜30ミル)加撃面 単板ガラス
    耐熱強化複層ガラス
    (FL3+空気層+耐熱強化ガラス 6.5mm) 加撃面FL3
    強化複層ガラス
    (FL3+空気層+強化 4mm) 加撃面FL3
    1ミル=1/1,000インチ(0.025mm) 30ミル=約0.76mm

    A:P3Kに属するものは、ドライバーを使ったこじ破りに対し防犯性能が期待できるもの。

    B:P2Kに属するものは、補助鍵との併用により、ドライバーを使ったこじ破りに対し防犯性能が期待できるもの。

    C:P1Kに属するものは、ドライバーを使ったこじ破りに対し防犯性能が期待できるレベルには届かないが、単板ガラスのフロートガラス、網入りガラス、強化ガラスとの比較においては優位性が認められたもの。

    D:単板ガラスのフロートガラス、網入りガラス、強化ガラスについては、「こじ破り」に対する防犯性能は期待できない
    参考>試験方法概略 侵入再現試験
    ※ 詳細については、財団法人 都市防犯研究センター資料 参照

    A:試験体 W 6尺 × H 4.5尺の引き違いサッシにガラスをはめ込んだもの

    B:使用道具 ドライバー

    C:実験方法 ドライバーによるこじ破りを実施し、クレセントを外して外障子を開けるまでの時間(所要時間)を計測する

6)官民合同会議による防犯性能の高い建物部品との関係

CPマーク

「防犯性能の高い建物部品」を広く皆様へ普及促進を行う上で、共通呼称(防犯建物部品)とシンボルマーク(上記)を、官民合同会議にて作成しました。このマークは「防犯性能の高い建物部品リスト」に公表記載された「防犯建物部品」のみに与えられます。

※シンボルマークの意味について:
「防犯」=“Crime Prevention”の頭文字CとPをシンボル化しています。

「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」によって「防犯性能の高い建物部品」に搭載されたガラスについて、板硝子協会は「防犯ガラス」と呼称することを認める。

<本基準を適用するにあたっての注意事項>

ここで規定した「防犯ガラス(防犯性能が期待できるガラス)」は、実験の性質上から考えられる再現性や、実際の犯行との相違などといった点から、絶対的なものではなく、むしろ相対的な位置付けを示すものとして捉えるべきである。

また、これらのガラスは何れも、「破れない」ガラスではなく「破りにくい」ガラスであることも認識しておくべきである。

したがって、開口部の防犯設計にあたっては、ガラス単体だけでなく、補助錠との併用や頑丈な窓構造への転換、セキュリティシステムを導入する、などといった総合的な検討を行うことが必要である。

PageTop